◆ 決算書に関する要求事項
    決算書の内容に対する要求は、決算書の読み手により異なります。
  1.税務署向け
    上記の要求事項さえ満たせば、税務署は申告を受け付けます。自主申告による納税が目的だからです。
   零細小規模企業には「融資不要」と割り切る企業は、実に多くあります。端(はな)から銀行に相手にされないと
   考えるか、運転資金・設備投資資金が不要な企業です。彼らは税理士に対して、「税法要件」を最低限で許される
   程度の粗雑さでの決算申告を要求し、提出資料も不足のまま情報提供してくれません。弊社では、これは「銀行融
   資」には不向きである旨の念書を取り付けています。
    だから「格安決算」が受けます。これを途中で「融資目的」に使うのは、税理士との約束違反ですが、会社の
   勝手ですので、中には税理士に黙って、銀行に持ち込む者もいるようです。後で所謂「チェックリスト」を求めて
   きますが、それなりの書類を出す義務は、税理士にあります。銀行はその経営を理解する必要があります。

  2.銀行向け(融資対応)
    銀行融資対応の決算申告書は、上記の第Ⅱ~Ⅴ項を満たす必要があります。そしてそのモードの決算申告をする
   には、依頼者の決算に対する一定レベル以上の決算への「参加意識」と、決算に対する協力が必要です。


 ◆ 第1項 法令順守
    決算申告が、憲法、商法、会社法、法人税法その他の関係法令に基づいたものである以上、中小会計要領を含む
   法令順守は不可欠です。無申告には最悪の場合、刑法が待っています。
   因みに税務署への法人決算申告には次の書類が必要です。
      1.決算申告書(①決算書 ②決算内訳書 ③別表1~16等 ④概況書)
      2.所謂「チェックリスト」(謂わば「簡易決算監査報告書」)
      3.株主総会議事録(決算承認書)
      4.税務申告委任状(税務申告権限証書)
   なお融資銀行向けモードによる決算申告書は上記の他、上記図表のⅡ~Ⅴ項の書類や行為が要求されます。

 ◆ 第2項 代表者自らの決算内容の説明
   平成24年から官民一体で推進する「中小会計要領」によれば、中小企業は中小企業会計指針(新会計)による決算
  をして、その概要を社長自らが説明できるように求めています。(経理の記帳代行をしても、その経理責任は社長に
  あり、経理内容の掌握は重要と位置づけられています)。
 
 ◆ 第3項 所要の決算付随書類
   税務申告には求められないが、融資銀行が要求する書類があります。
  それらを列記すれば次のような書類です。
   ① CF計算書(キャッシュフロー計算書)
   ② 事業計画書/暫定経営計画書
     イ) 債務者区分「要管理先」以下の不良債権先には、実抜計画(実現可能性が高い抜本的な事業計画)を
       求められます。その達成率は80%以上とされ、達成できない場合は、債務者区分「破たん懸念先」以下
       にランクされ、5~7年程度を経て強制的な破産処理に向かうものと考えられます。
     ロ) 暫定リスケ等で、暫定経営計画を立てた場合は、次のステップとして、「実抜事業計画」へと進み、
       融資返済の債務履行が迫られます。
     ハ) 事業計画は、時の経過に従って、予算が実績に移って行きます。そのため予実管理(予算・実績)が
       継続的に(通常は月次に)必要です。ただこの作業は、実務としては、MAPIIシステムがないと実施が
       不可能です。その報酬予算も組み入れて考える必要があります。
   ③ 経営分析表
   ④ 月次損益/月次貸借推移表
   ⑤ 3期比較損益/貸借対照表
   ⑥ 本支店/部門別(商品別等を含む)分析表(実務的には、本支店会計ソフトを使う必要がある)
   ⑦ SWOT分析・検討表
   ⑧ 減価償却修正表(別表16を「正規償却」に修正する作業で、償却不足を修正するもの)
   ⑨ たな卸表(品目別の名称・数量・単価(棚卸方法を税務署に届け出て置く必要があります)
   ⑩ 売掛金・買掛金の月次推移表(全取引先について、相手の社名・住所も必要です)
   ⑪ 資金繰り表
     イ)メモ書きでも良いから資金繰り表はまず、書面化しましょう。感ピュータは評価されない
     ロ)社長が日々考えている内容なので「表現力」だけの問題です(日々の動きの記録、予測と計画)
     ハ)融資モードの資金繰り表の作成・更新は、クラウド会計の仕組みを使えば、税理士の支援は可能です
  
 ◆第4項 税務申告で不要、融資銀行で必要な書類
   ⑪ 営業利益の展望(赤字の場合は特に詳しく。一過性の赤字か否かの情報を含む)
   ⑫ 仮払金・貸付金の月次清算(事績の解る証拠を伴う会計処理の結果報告となることが望まれます)
   ⑬ 投資等については、本業で稼働か否かを明示下さい
   ⑭ 繰延資産については、適正償却の実態が判るように記載報告下さい
   ⑮ 固定費の説明
     (1) 人件費の詳細説明(人事計画を含む)
     (2) 家賃(地代家賃)の説明(所在地、契約概要を含む)
     (3) リース料(資本的支出か否かの区別を含む)
   ⑯ 売掛金・買掛金
     (1) 回収サイト・支払サイトについて、客先別情報が必要です。
     (2) 残高の適正性の検証(不良債権・債務の排除)が必要です。
     (3) 残高と上記サイトの適合性の検証が必要です。

 ◆第5項 稟議書(銀行融資)に記載される決算情報の理解
   ⑰ 預金の内容(金額)
     (1) 月中入金
     (2) 月流動性平均(平残)
     (3) 固定預金
     (4) フィー収入
     (5) デリバティブ収入
     (6) 職域取引
     (7) オーナー取引

   ⑱ 与信バランス(比率)
     (1) 手貸 - 預金
     (2) 当貸 - 保証協会保証
     (3) 証貸 - 不動産根抵当
     (4) 外為 - 有価証券
     (5) 総与信 - 保全 = 「裸貸し」

   ⑲ 実質自己資本の算出
     (1) 売掛金 - 不良先(帝国データバンクの評点)
     (2) 在庫 - 業界平均の余剰分 
          
備考:業界平均の在庫で客観的在庫水準を見ようとします。
             この場合、「業界」が正しい反映(報告状況)が重要です。
             資料がない場合は税務申告書(多くはいい加減な業種選定)から採ります。
     (3) 貸付金・仮払金
          
備考:資産性を認めるには、その実態が契約に基づき適正な経理で実際の動きが重要です。
     (4) 有価証券
          
備考:時価で算定します(時価の収集に役立つ情報が報告されている必要があります)
     (5) 土地建物
          
備考:本業での稼働が求められます。本業以外のものは処分が相当です。

   ⑳ 実質キャッシュフローの算出
     (1) 支払利息 < 営業利益 
          
備考: 余剰な有利子負債(借入金)がチェックされます
     (2) 雑収入   一過性のものは除外(計算外に置かれます)
     (3) 特別損益  一過性のものとして除外します(計算の埒外)
     (4) 算定方法  過去3年平均で算定します
         ※ 実質経常利益×60% + 減価償却費
              実質経常利益 = 経常利益 - 「一過性収入」
   [21] 信用格付け
     (1) 借入依存度  60%以内であること
          (借入金+割引)÷総資産 >60% 
     (2) 経常収支比率 固有の算式により計算します(粉飾等が露見します)
           過去3期 > 100% 
     (3) 実質長期負債返済年数 10年以内が求められます
           実質長期負債 ÷ 実質キャッシュフロー < 10年
             ※実質長期負債 = 有利子負債 - 正常運転資金
             ※正常運転資金 = (売掛金ー買掛金)+在庫(在庫仕入金額)

   [22] 行内査定による貸倒引当率
     融資を受けた中小企業リスケ先(不良債権先)は、自社がどのランクにあるか知って置くべきです。
     (1) 債務者区分「正常先」  0.2%
     (2) 債務者区分「要注意先」 3%~8%
     (3) 債務者区分「破たん懸念先」 40%~60%
     (4) 債務者区分「実質破たん先」「破たん先」 100%
              
          
             


    
◆決算モードの違いで死ぬ会社とは
 お断りとして、ここで説明する「決算申告書モード」のうち、税務署向けモード(不足情報満載のもの)で実害を被る者は、銀行融資を受けた中小企業でリスケを実施し、且つ債務者区分が不良債権(開示債権)たる「要管理先」以下の会社(約30~40万社)が対象です。それ以外の方には法律問題や、喫緊の経営問題とはなりません。
 生殺与奪が銀行に握られた中小融資の不良債務会社には、宜しければ以下の情報を参考に、対応をお勧めします。
決算書に二つのモード?
決算書のモードって面白いね?

 決算申告書に現れる謂わば「記載モード」には次の2種類 (比較表はこちら)があります。
      
税務署向けモード    義務的申告で不足情報多数(売掛先住所なし等々)
      
融資銀行向けモード   銀行が求める情報を満載した誠意あるもの

 
お断り: 基本的に事業計画書のような別報酬のものを除き、「決算申告書」にモードの違い
 による種類はありません。しかし ①決算資料の提供不足 ②決算意欲の欠如等による経営者の
 決算に対する意識レベルの違いでモードの違いが露出します。税務署モードでの銀行提出は
 弊社は禁止しています。

 
備考: 別段の決算書モードとして、中小企業融資を受けるも「リスケ」を実行した債務者
 区分「要管理先」以下の中小企業には 「実抜事業計画書」に加え、決算及び計画に関する
 詳細な分析・報告書が必要ですが、それは別途、認定支援機関の仕事メニューで議論します。
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決算申告書 2つのモード




◆税務署向けモード ◆銀行向けモード
区分    決算申告での要求事項          具体的な帳票等  税務署   銀行
 Ⅰ  法令・会計原則(中小会計要領)      ○   ○
 Ⅱ  代表者自らの内容説明  中小会計要領に基づく要請    ×   ○
 Ⅲ  要添付の決算関係書類  下記第4項 ①~⑩    ×   ○
 Ⅳ  要求の決算処理  下記第5項第 ⑪~⑯    ×   ○
 V  理解が望ましい銀行の稟議事項  下記第5項第 ⑰~[22]    ×   △