申告書及び届出書に係る各種添付(提出)書類の整備
消費税の増税対策として、不正還付未遂犯″に罰則 添付書類の提出義務化も用意されています。2012年9月消費税増税が決まり具体的な増税準備がスタートしています。消費税の効率よい管理手法として、既に今年4月から動き出している「申告書及び届出書に係る各種添付(提出)書類の整備」。具体的には、消費税に関する申告書や各種届出書類を提出する際に添付する書類の枠を広げるという内容で、これまで任意だった書類提出の義務付けも含まれています。
例えば「仕入控除税額に関する明細書」は、仕入税額控除によって消費税の還付申告をする際に還付申告書添付が要る書類で、控除対象となる取引金額の明細や、還付申告となった主な理由、主な課税仕入れの明細(資産の種類、取得日、取引金額、取引先名、取引先住所)などを記載して提出するもの。この明細書についてはつい最近まで提出義務はありませんでした。不正還付封じのため、今年4月以降の還付申告書の提出から実施されています。
地方公共団体の多くは法人税の申告納税義務はありません(消費税申告のみ)。しかしその申告書には決算書類や課税仕入れなどの税額計算の明細書の添付義務はなく、国税当局における申告審理の場面で十分な検討が行えていない。そこで地方公共団体も決算書類などの提出を義務付ける方向にある(平成22年度税制改正意見)。地方公共団体の消費税申告はもはや聖域ではありません。
外国法人に係る調査体制も厳しくなりました。国内に支店や事務所、工場などの恒久的施設を持たない外国法人については、国税当局は長い間「納税者」としての管理はしていませんでした。しかしそれでは実態把握が極めて困難なため、外国法人から提出される消費税課税事業者選択届出書について商業登記簿などの添付を義務付けるよう要望しています。書類添付を義務付けて情報収集しようとしているということは、国税当局がその周辺に強い関心を寄せているということです。
2011年税制改正で「消費税受還付罪の未遂犯の処罰規定」という処罰規定も創設されました。消費税の不正といえば不正還付。消費税は、売上にかかった消費税から仕入れにかかった消費税を控除(仕入税額控除)して納める仕組みです。輸出売上は非課税となるため、輸出業者は仕入れにかかった消費税を還付申告によって取り戻すという仕組みです。また大規模な設備投資などに還付が発生しやすいです。こうした消費税特有の仕組みを利用して架空の海外取引を介在させ不正に還付金を受け取るケースは多いです。実際に不正還付を受けた者には「消費税受還付罪」の規定(消費税法64条1項2号)が設けられているが、不正な還付申告をしたものの税務署のチェックにより否認されたケースについては「還付金の受領」という犯罪の結果が伴っていないため「受還付犯」が成立しませんでした。未遂犯を取り締まる法律がなかった訳です。そこで「受還付未遂罪」を設けて不正受還付の未遂についても罰則規定が税制改正に入れられました。「未遂」に対する刑事罰は2011年9月から適用されています。
いずれの改正も、消費税負担が増えれば更に深刻化する問題への対応策が多いです。国税庁は消費税の大増税時代を睨んだインフラ整備を進め、増税が決まった今、その動きはさらに活発化します。納税者はその動向を理解して申告納税制度での違反回避を図らなければなりません。